片瀬さんの言葉がひっかかる。


誰に対してなんだ…?

言いたいことが言えない?

なつさん…?

いや、高校からの付き合いプラス八年も一緒に住んでるんだ。

今さら言えないことなんてないだろう。

じゃあなんだ?

俺…、それとも明莉か…?

やっぱり片瀬さんは明莉が好きなのか…?

目があった片瀬さんはすぐに俺から目を反らして

「俺今日は当番で出勤だからそろそろ行くよ。

それから、夜はバイトだから帰らない。

明日の朝には帰宅するから、香田、その続きは今夜思う存分やってくれ。

ったく、お前ほんと、以外にツンデレなんだな。

じゃあいってきます」

片瀬さんの言葉に慌てて

「いってらっしゃい」

と明莉が再びもがいて俺の胸から顔を離して、わずかな隙間から片瀬さんに顔を覗かせて返事をした。

「…いいもんだね…いってきます明莉ちゃん」

にっこり微笑んだ片瀬さんに俺の胸がざわついた。