竹内さんと入れ違いに、退職書類を取りに来た朝陽さんが総務に姿を現し
「明莉ちゃん、仕事中にごめんね、少しだけ時間もらえる?」
今一番会いたくない人が私に声をかけてきた。
朝、先輩から聞きたくもないことを効かされた場所に、今度はその本人と向かい合っていた。
朝陽さんは、昨日遅くまで蓮司を付き合わせてしまったことを謝りながら、退職すること、蓮司のことを支えてほしいと私に頭を下げた。
朝陽さんの話なんてまるで耳に入っていなかった。
気がつけば朝陽さんに叫んでいた。
「どうして佐藤さんに蓮司のことを頼まれなくちゃいけないんですか?」
「えっ…」
困惑する朝陽さんにさらに言葉を投げつけていた。
「どうして人のモノになってから欲しがるんですか?
私と結婚する前に、付き合う前に機会はずっとあったでしょう?
十日後に挙式なのに…。
どうして今なの?
今まで我慢したなら最後まで我慢してよ!
今さら欲しがったりしないでよ!」
絞り出すように出した私の悲痛な叫びに朝陽さんはその綺麗な顔を歪めて
「ごめんなさい」
と一筋の涙が流れ落ちた。
大声で泣き出したいのは私だ。
朝陽さんは狡い。
これじゃあ、私が邪魔者で悪者じゃない。
泣くもんか!!
噛み締めた唇から血が滲み、口の中に血の味が広がっていく。
「もう、いらない…、蓮司なんていらない!」
そのまま振り返らずに会議室を出て、デスクに戻ると無言で仕事に没頭した。
今は何も考えたくなかった
「明莉ちゃん、仕事中にごめんね、少しだけ時間もらえる?」
今一番会いたくない人が私に声をかけてきた。
朝、先輩から聞きたくもないことを効かされた場所に、今度はその本人と向かい合っていた。
朝陽さんは、昨日遅くまで蓮司を付き合わせてしまったことを謝りながら、退職すること、蓮司のことを支えてほしいと私に頭を下げた。
朝陽さんの話なんてまるで耳に入っていなかった。
気がつけば朝陽さんに叫んでいた。
「どうして佐藤さんに蓮司のことを頼まれなくちゃいけないんですか?」
「えっ…」
困惑する朝陽さんにさらに言葉を投げつけていた。
「どうして人のモノになってから欲しがるんですか?
私と結婚する前に、付き合う前に機会はずっとあったでしょう?
十日後に挙式なのに…。
どうして今なの?
今まで我慢したなら最後まで我慢してよ!
今さら欲しがったりしないでよ!」
絞り出すように出した私の悲痛な叫びに朝陽さんはその綺麗な顔を歪めて
「ごめんなさい」
と一筋の涙が流れ落ちた。
大声で泣き出したいのは私だ。
朝陽さんは狡い。
これじゃあ、私が邪魔者で悪者じゃない。
泣くもんか!!
噛み締めた唇から血が滲み、口の中に血の味が広がっていく。
「もう、いらない…、蓮司なんていらない!」
そのまま振り返らずに会議室を出て、デスクに戻ると無言で仕事に没頭した。
今は何も考えたくなかった