「では、病室にご案内します」

看護師の声にはっと我にかえり、握り締めていた朝陽の手を離して椅子から立ち上がった。

「病室は東病棟の六階になります」

病室に案内されて、お母さんはナースステーションに入院の手続きに行き、病室に残された俺と朝陽は二人になった。

ベッドに横たわるお父さんは、麻酔がきいていて夜まで目が覚めないと説明されていたが、時々苦しげなうめき声を漏らしていた。

お父さんをじっと見つめたままの朝陽が

「ごめん…」

ポツリと呟いた。

「迷惑かけてごめん…」

「いいよ、別に迷惑だとは思ってないから」

「ありがとう…、ごめんね蓮司」

ようやく俺に顔を向けた朝陽は、泣き笑いしながら目を合わせた。

朝陽の頬をつまんで

「そんな情けない顔すんな!
朝陽が困ってるなら出来る限り助けてやるから遠慮しないで寄りかかれ」

「痛いって蓮司!わかったから!
だから手、離してよ」

少しだけ落ち着きを取り戻してきた朝陽に今後の話を切り出した。