病院へ向かう車の中で朝陽は両手をぎゅっとにぎりしめて青ざめたまま震えていた。

いつも冷静な朝陽がここまで取り乱すのは、お兄さんを十年前に事故で亡くしているからだ。

朝陽が整備士になり、家を継ごうとしているのは車が好きなこともあるが、お兄さんの代わりになろうとしているからだ。

手を伸ばして震える朝陽の手を握り締めた。

「朝陽、お父さんは大丈夫だから。
俺がついてるから落ち着け」

「蓮司…どうしよう……お父さんに何かあったら私…うぅっ…」

握り締めた手の上に、ぽたぽたと朝陽の涙が落ち、俺の手を濡らしていく。

朝陽とは八年の付き合いだが、こんなにも取り乱して感情を露にしている朝陽を見るのははじめてだった。