ぎゅっと唇を噛み締め溢れそうな涙を我慢しながら蓮司のツナギの袖を握り

「お願い…蓮司…」

震えている朝陽さんに母を亡くした時の自分の姿が重なり、咄嗟に蓮司に向かって叫んでいた。

「蓮司っ、お願い!一緒にいってあげて!」

思わず叫んだ私の声に、蓮司が大きく目を見開き固まった。

その目を一度ぎゅっと閉じて、固く拳をにぎりしめると、険しい表情をそのまま竹内さんに向けた。

「俺と朝陽が抜けて一人で仕事まわせるか?」

「はい、大丈夫です」

「わかった。竹内、あとは頼んだぞ。
…それから、明莉のことも頼む」

崩れ落ちそうな朝陽さんの肩を抱いた蓮司は、私の方を見ることもせずに、足早に会社に向かって歩きだした。

朝陽さんを支えながら寄り添って歩く二人の後ろ姿を見つめる私は、その場から動くことができなかった。