「あれ?会社からですね」

画面を確認した竹内さんが携帯を耳にあてた。

「はい、竹内です。
え?あ、はい、一緒です。代わりますか?

片瀬さんからです」

携帯を耳からはなした竹内さんは、すぐに蓮司に差し出した。

「はい、香田です。…はい……はい、えぇ……わかりました」

蓮司の顔は険しかった。
通話を終えると竹内さんに携帯を返して、朝陽に一歩近づいた。

「朝陽、落ち着いて聞け。
会社にお母さんから連絡が入った。
朝陽のお父さんが交通事故にあってK 大学病院に運ばれた。
今、手術中で重体だ。すぐに病院に行け。
自分で運転するのは危ないから、片瀬さんが一緒にいってくれるから……」

朝陽さんの顔が血の気を失い、ぐらりと体が崩れ落ちかかったのを蓮司がすぐに抱き止めた。

「朝陽、しっかりしろ!
大丈夫だから。落ち着けっ!」

青い顔をした朝陽さんが身体を震わせ蓮司にしがみつき

「やだ、どうしよう蓮司っ!
蓮司、お願い、一緒に病院に来て!」

突き放せずに困った顔をした蓮司を見かねた竹内さんが、蓮司にしがみつく朝陽さんの腕を掴み
「佐藤さん、俺が一緒にいきます。
香田さん会社をあけるわけには行かないから俺と行きましょう」

優しく声をかけた竹内さんの腕を朝陽さんはすぐさま振り払った。