「ねぇ」

入学してひと月ほどたった時だ。

学校の帰り道、駅の改札で声をかけられた。

「香田くんは、一度も目があったことないけど、私に全く興味もってないよね?」

はじめて言葉を交わした朝陽を、俺ははじめて正面からまじまじと見つめた。

確かに美人だ。

クラスの男たちが騒ぐのも理解できる。

でも朝陽にはいや、女には高校を卒業してから全く興味がなくて、遠ざけたいくらいめんどくさくて、ここに入ってからも数少ない女から声をかけられうんざりしていた。

(こいつもかよ…。
しかも、何だよ俺が関心ないのがきにいらないのか?)

「俺、アンタには興味ないし女とどうこうしたくて学校来てるんじゃないから」

不機嫌さを隠さずに冷たい目を向けて朝陽に言葉を返すと、彼女は途端に表情を崩してお腹を抱えて笑いだした。

それが俺と朝陽がはじめて言葉を交わし、一緒に仲間として過ごすことになったきっかけだった。