しばらくして届いた荷物を片付けていた。涙はしっかりと止まったけれど、彼の部屋にある思い出あるのもを見つけると、目の奥が熱くなったけれど、グッと我慢をして過ごした。
 彼の手紙にあった通り、彼のクローゼットの引き出しには、璃真の通帳が入っていた。彼は給料からほとんど手をつけずかなりの大金が残されており、空澄を驚かせた。

 少しずつ冷静になってきた頭で、空澄は璃真の手紙の内容を考え直した。

 璃真はきっと花里家が純血の魔女の家系だと知っていたのだろう。空澄はそんな気がしていた。希海が鴉だったことを知っていたのだから、そう考えてしまう。
 そして、璃真は何故自分が死んでしまうとわかっていたのか。それがわからなかった。誰かに予知でもされたのか。けれど、魔女はそんな占いをしないのは希海から聞いていたので、それは考えられない。
 そして、希海は、空澄が魔女の娘だと璃真が知っていた事を知っていた………?
 空澄や璃真を鴉という存在で見ていてくれたのだ。希海は全て知っているのではないか。



 「空澄ー?荷物、片付け終わったのか?」
 「っっ!!」


 突然璃真の部屋に入ってきたのは、もちろん希海だった。
 空澄はビクッと体を震わせて、そして咄嗟に持っていたノートをクローゼットの中に押し込んだ。

 「あ………希海。ごめん。いろいろ懐かしくて……ついつい眺めてたら遅くなっちゃった」
 「………そうか?あんまり、無理するなよ?」
 「うん。ありがとう。もう少しで終わるから、終わったらまた地下室行くね」
 「あぁ……」


 きっと、希海は空澄の目が赤くなっていたのに気づいたのだろう。あまりその事には触れずに、すぐに部屋を出ていってくれた。その配慮に感謝しながらも、空澄の頭の中は疑問でいっぱいになっており、迷いの眼差しで希海の背中を見送ったのだった。