「ワトソン……?」

久しぶりに聞く優しそうな声が、耳に入る。

「……秀介(しゅうすけ)……」

「やっぱり、ワトソンなんだな?」

日本語で、幼なじみの秀介は言った。だから、僕も日本語で「うん!」と返す。

「5人目は、カエデさんの弟の古賀(こが) 秀介だ」

「秀介の姉……?」

僕は、レストレード警部の言葉に驚きを隠せない。

「そうだよ。カエデ・ウーリーは、俺の5歳年上の姉なんだ」

悲しそうに、秀介は微笑んだ。

「秀介って、英語喋れたっけ?」

秀介に問いかけると、秀介は真顔で「全く喋れんし、理解出来ん」と言う。

「やっぱり……僕がずっと教えてたもんね……その代わり、日本史を教えて貰ってたっけ……」

「ワトソン、変な話は後にしろ!」

ホームズに怒られ、僕は「変な話って何!?」と叫んだ。

「変な言語で話すな」

冷たい目が、僕に突き刺さる。……変な話に、変な言語……。

「これは、日本語なの!」

僕の言葉に、ホームズは何かピンと来た顔を見せた。

「ワトソン。日本語で書かれたという手紙を見せろ」

「え?う、うん。分かった……」

僕は、パーカーのポケットから手紙を取り出してホームズに渡す。

「ワトソン。お前、この手紙を見た時、文に違和感を感じただろ?」