店に入ると想像以上に中が広くて、色とりどりの鮮やかな花たちが、ところせましと並べられている。

「わぁ~キレイ!」

「花、好きなんですか?」

「花は嫌いなの?」

「僕はどっちでもいいです」

「相手の彼女のことを聞いてんのよ」

 そう言うと、うつむいて何かブツブツ文句を言い出したけど、相談相手に私を選んだキミが悪いんだから、仕方がない。

「あ、ほら、やっぱり告白するなら、バラの花束でしょ」

 店内の一角、ショーケースの中に鎮座する立派なバラたち。

「定番すぎません?」

「私だったら感動する」

 ベルベットのような、鮮やかな深紅のバラの花束。

一度くらい、こんな立派なバラの花束を渡されて、好きな人から告白されてみたい。

「これに決まり」

「えぇ~!」

「店にあるの、全部」

 そう言うと、彼は困ったような顔をする。

「やっぱり、やめとく?」

「でも今日、この後告白するって、決めてるんです」

「約束してるの?」

 彼はこれ以上赤くなれないだろうっていうくらい、まっ赤な顔をしてうなずいた。

「じゃあ、急がないとね」

 私に言われるがまま、彼はその腕に抱えきれないほどの、大きな花束を買い求めた。