「三実さんの妻でありたいです」

この人のことが好きなのかと言われれば、まだわからない。怖いという感情もよくわからないという気持ちもある。
だけど、一蓮托生の夫婦になる覚悟は決めてきた。

「だから、何日も家に帰らないとか、私を避けるような態度はいかがなものかと思います」
「ああ、それはすまん」

三実さんが笑う。
気が緩んだような柔らかな笑顔だ。いつもの外向きの笑顔じゃない。子どもみたいに無邪気な顔だ。
こんな風に笑う人だったのだと驚いた。

「まずはいきなり離婚を突きつけられるのではと少々怖気づいた」

しおらしい言葉に胸がきゅっとなったのもつかの間、三実さんは言った。

「しかし一番は、この状態で並んで眠ったら、確実におまえを襲う自信があったからだ。安全のために距離を取らせてもらった」
「え?」

私の安全のために帰らなかったというの?二週間も距離を取って過ごしていたの?

「もうおまえも気づいていると思うが、どうも俺は好きな女には偏執的になってしまうらしい。八年以上お預け状態の新妻というだけで身震いがするほど愛しいんだ。頭から丸ごと食べられるなら食べてしまいたい。めちゃくちゃにしてしまいたい。おまえと再会してから毎日毎日この欲求と闘っている」

無邪気な笑顔の奥で、例の瞳がぎらりと光る。単純で強い欲望を感じる。
やっぱり、この人の本性はこれだ。貼りついた表の仮面がはがれたからこそ、いっそう強く伝わってくる獣の性。