「服はどういうものを着たい?」
「あまりこだわりはないです」
「今日みたいな格好が好みか?」
「ええと、そうかもしれません。母がスカート好きで子どもの頃からスカートばかり履かされていたので」

なぜ質問攻めなのだろう。三実さんの意図がわからない。
ただ、二週間近く私を避けていた人が、ひたすら歩きながら私に質問をし続けている状況は、奇異ではあっても悪意や嫌悪は感じない。

「動物は何が好きだ?鶏は好きだと聞いている」
「なんでも好きですよ。犬や猫、小動物も。爬虫類や、虫にも興味があります」
「それはすごい」
「三実さん」

そろそろこの外出の真意が知りたい。そして私からも話がしたい。ジャングルのようにしつらえられた道で立ち止まり、彼の名を呼んだ。
三実さんもまた立ち止まった。

「幾子」

今までの質問と同じ口調で、彼は尋ねた。

「離縁したいと、思っているか?」

振り向いた三実さんは、うっすら微笑んでいたけれど、寂しそうな表情をしていた。この人のこんな顔を見たのは初めてだ。

ああ、三実さんはこの質問をしたかったんだ。
やっとわかった。