「名前.......教えろ」
「麗妃です」
「.......」
「.......あの、あなたは?」
少しの沈黙が流れた。
少しの沈黙でも、彼の隣だと落ち着く。
「.......東の野獣だ」
「ッえ?」
「お前が探している 東の野獣だ」
そこで、ッハとした。
よく見ると 人間からかけ離れた顔立ち。
彼が、"東の野獣"。
この東の支配者。
誰もが恐れる 野獣。
"冷酷な野獣"
琳が言ってたように、人を殺していても
野獣は 優しいと思う。
私の話を何も言わず聞いてくれたし、
━━━━━━━.......
「次は、友達と来ますね」
「もう、来んな」
「ッなんでですか?」
「東は、危険だ 何が起こるか分からない そんな街だからだ」
ほら、今日知り合ったばっかりなのに
私を心配してくれる。
"優しい野獣"
「そうですか」
と、返事していた。
周りが、どんな目で見ていたか知らずに。
その後、どうやって帰ったかは知らない。
ただ、覚えているのは 彼の優しさ。
次の日に、昨日野獣に会ったことを 琳に話した。
「えええええぇ、さすがレイだわ」
「次は、琳と来るって言ったよ」
「ま、まじか」
あの夜から、1ヶ月過ぎた。
私は、あれから 水曜日に 毎日 東に行っている。
野獣に会うために。
野獣は、私が来る度に 私の話を聞いてくれる。
私の横で、煙草を吸うけれど、吸う時は なるべく近づいてこない。
彼なりの"優しさ"が分かった。
野獣の名前は"仁"だそうだ。
彼の名前を聞いた時 その名前が私の脳内に刻まれた。
そんな今日は 木曜日。
昨日、琳を連れて行った。
琳は何故か お辞儀を沢山していて それを困ったように"仁さん"が見ていた。
なんとなく、その光景が面白かった。
今日は、琳が 先生に呼び出された為、私は1人で下校している。
すると、私の横に 高級そうな黒いベンツが止まった。
________バタンッ
ドアが開いた。
「君が、レイちゃん?」
「はい」
この人も綺麗な人だな。
「ちょっと、話あるんだけどいいかな?」
「はい」
私は、黒いベンツに乗り込んだ。
「僕、黒崎 実 」
「有栖川 麗妃 です」
「よろしくね」
「はい」
「.......単直入に言うね」
彼が、その言葉を発したとき、車内
が凍りついた。
「仁分かるよね?」
「.......はい」
「もう、関わらないでほしいんだ」
「.......それは、仁さんが 危ない人だからですか?」
「うん、深く関わらない前にはやく 離れて欲しい .......あいつは 普通じゃない 麗妃ちゃんが 後悔する前に もう 合わないで欲しい」
「はい」
わたしは、その言葉しか 出てこなかった
多分、この 忠告は 実さんの優しさなんだろう。
こうして、私が傷つく前に 仁さんから遠ざけようとしている。