「ふぇっ、くちひる……!?」
「それ以外どこがあんだよ」

 てっきり頬だと思っていたわたしは、いっそう焦る。だって、紛れもないファーストキスだ。

「いけー!」
「きゃー! やばっ!」

 盛り上がるクラスのみんな。この空気の中では、ファーストキスすら余興に過ぎない。

 相手が皇くんといえど、キスなんてもちろんしたくない。――だけどここで拒んだら、わたしのせいでクラスのみんなはしらけてしまうのだろうか。嫌われてしまうだろうか。
 
 皇くんの整った顔が近づいてくる。
 パニックで頭が真っ白になって、ぎゅっと目をつむった、その時。不意に背後から肩を引き寄せられた。

「なにしてる」

 そして続けて聞こえてきた声に、わたしの心臓が震えた。