ホームズの子孫の役に立ちたい

「今から、私たちの指示に従ってください。従わないというのなら公務執行妨害で逮捕します」

レストレード警部の言葉に、先生たちは騒ぐのをやめる。先生だけでなく、様子を見に寮から出てきた生徒も静かになった。

「まず、今回の事件の依頼はいなくなったヴァイオレットさんの捜索でした。彼女はあの塔に監禁されています」

ホームズさんがハティーさんに言う。ハティーさんは驚き、同時にあの先生が顔を真っ青にした。

「ヴァイオレットさんを監禁したのは、あなたですね?メアリ先生」

メアリ先生は顔を真っ青にして震えている。ホームズさんは言った。

「イザベラス学園では、今から十年ほど前にある生徒が行方不明になる事件が起きました。新聞の記録によると、最後に被害者と話していたのはあなたです。あれはただの失踪事件ではなかったのではないですか?」

メアリ先生は顔を真っ青にしたまま、首を横に振る。体だけでなく唇も震え、言葉が出ないみたいだ。
私たちは懲罰塔の前へと移動する。次に、ワトソン先生が言った。

「ヴァイオレットさんのスマホの検索履歴を調べたら、ピッキングについて調べてた。やっぱり和香が見つけたあの針金は、ヴァイオレットさんが使ったものなんだよ」

「調べたのは僕だがな」

ホームズさんはそう言い、針金を差し込んでいとも簡単に扉を開ける。ギイッと重い音が響いた。

中は薄暗く、上へと続く螺旋階段には埃が積もっている。ホームズさんを先頭に、私たちは幽霊が見えた場所へと向かった。私たちの後ろには、ハティーさんや学園のみんながついてきている。

「この部屋だな」

古びた木でできたドアの前にホームズさんは立つ。鍵がかけられていたけど、ドアを壊して中に入った。

「ヴァイオレット!!」

部屋に入った刹那、ハティーさんが声を上げる。その部屋の床には、縛られたヴァイオレットさんが寝かされていた。長時間拘束されていたからか、グッタリしている。

「大丈夫ですか?」
医者のワトソン先生、そして看護師の私はヴァイオレットさんを縛っている縄を外し、怪我の様子などを見る。

「……み、水……を……」

途切れ途切れの小さな言葉が聞こえ、私はペットボトルの水を差し出す。ヴァイオレットは少しずつ飲んでいった。縄で縛られていたため、手首などが赤くなっているが、それ以外に怪我はなさそうだ。

「人は隠し事をしたい時、誰にも見つかってほしくない時、どんな手を使ってでも守り通そうとします。あなたが隠したかったのは、この部屋に隠したセーラ・カッシングさんの遺体ですよね?」

ホームズさんがそう言うと、メアリ先生は床に崩れ落ちる。レストレード警部が「署でお話を」と言い連行していった。

ヴァイオレットさんは、学校の近くの病院で詳しい検査をすることになり、ワトソン先生がその病院まで送ることになった。

「和香、ゆっくり休んでね」

私の頭を撫で、ワトソン先生はヴァイオレットさんを病院まで連れて行くため車に乗り込む。車が遠ざかっていくのを、私はジッと見ていた。

「お疲れ様、和香」

ホームズさんが隣に立ち、微笑む。私も「ありがとうございます」と微笑んだ。
メアリ先生は、取り調べに素直に応じているらしい。レストレード警部が話していた。

メアリ先生がイザベラス学園の教師になりたての頃、放課後に校則違反をしたセーラさんを懲罰塔へ連れて行き、罰を受けさせていた。しかし、セーラさんは心臓発作を起こして亡くなってしまった。このことがバレたら自分の身が危ないと遺体をあの部屋の床下に隠し、誰も来ないように幽霊の噂を話して回った。

しかし、何人かの生徒は興味本位で調べようとした。だから、怪我をさせて幽霊の呪いと思わせていたらしい。そんなある日、自分の知らない間にヴァイオレットさんが塔の中に忍び込み、遺体を発見したことがわかり、監禁したそうだ。

「ヴァイオレットさんはもう元気だって」

ワトソン先生からそう聞いた時、「よかった……」と呟いた。もう私はお嬢様学校の生徒じゃない。ワトソン先生の診療所で働く看護師だ。

「和香がいないと変な気持ちになった」

ホームズさんがそう言うと、ワトソン先生も「確かに!」と頷く。私も言った。
「私も、お二人の食事の支度をしないと思うと気持ちが落ち着きませんでした」

やっぱり、私にはこの場所が一番似合っている。ホームズさんとワトソン先生を見つめ、微笑んだ。

ホームズさんの推理を聞いて、ワトソン先生と仕事をする。二人の食事を作って、一緒に食べる。その生活が私は大好き。

「そうだ。和香が帰ってきたらしようと思っていたんだ」

ホームズさんが自室に入って行く。しばらくすると、立派なヴァイオリンを持ってやって来た。

「えっ?弾けるんですか?」

ヴァイオリンが難しい楽器だということは、あの学園の授業で痛いほどわかった。あと、下手な演奏を二人に聞かれたことが恥ずかしい……。

「ヴァイオリンは心を落ち着けたい時に弾くんだ」

そう言い、ホームズさんはヴァイオリンを弾き始める。美しい音色が部屋に響き、私とワトソン先生は椅子に座って演奏を聴いた。

ホームズさんは難しい曲も事件を解くようにあっさり弾き、何度拍手を送っても足りないくらい。
ベーカー街221B。私の日常がようやく戻った瞬間だった。



それから数日後、私は仕事がないため部屋の掃除をしていた。ホームズさんとワトソン先生は調査に出かけている。

イザベラス学園では掃除は用務員の人がしていたから、自分で掃除をするとやりがいがあっていい。リビング、お風呂、トイレ、寝室などを綺麗にしていく。

そして、ホームズさんの部屋のドアを開けた。ホームズさんは、人を自室に入れたがらないけど私とワトソン先生は違うみたいだ。

「相変わらずすごい本……」

本棚に置かれた様々な分厚い専門書を見ながら呟く。そして、本棚を拭いたりし始めた。

「ん?」

掃除を進めていると、机の上に一枚の紙が置かれていることに気づく。何気なくそれを見た。××大学の卒業生の名簿だ。メアリ先生の名前が載っている。

「ジェームズ・モリアーティ?」

その名前の部分だけ、赤い線が引かれていた。ホームズさんの知り合いなのかな?

今はまだ知らない。私の知らない場所で、大きな事件が動き出そうとしていることなんて……。
初めましての方、初めまして!お久しぶりの方、こんにちは!浅葱美空です!

今回は、ホームズの子孫シリーズをまたまた書きました。まあ、ミステリーをうまく書けないので事件の内容がアレですが……笑。

私はお嬢様とはかけ離れているので、お嬢様学校ってこんな感じかな、お嬢様が学びそうなことってこんな感じかな、と想像して書きました。もしも私がイザベラス学園に入学したら、外国語と楽器の授業は死んでいると思います笑。

最後にはホームズの原作でも宿敵となっているモリアーティの名前を出しました。彼はこれからどんどん出すつもりです笑。

読んでいただき、ありがとうございました!また次の作品でお会いしましょう!!

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