12月2日

 先生が担当する保健体育のテストは初日の最後だった。

 猛勉強した甲斐あってか、それなりには解けたが、教科書の隅々から出題されていたため、見落としていた箇所もいくつかあった。

 しばらくして、教室の扉が開いた。

 「何か質問とかある人いますか。」 
 
 先生だった。私はなんだか恥ずかしくて、チラチラと2度見することしかできなかった。

 マスクの下で湧き上がる笑みを抑え、先生の背中を見送った。

 先生の背中はスラリとしていたけど、なんだか大きかった。
  

 
 問題を解いていると、

 問6 あなたの信頼している人は誰ですか?

 人の名前書けばいいのかな?誰でもいいってことだろうけど、私の頭に先生以外の選択肢ないなぁ。そんなことを考えて結局、先生の名前を書いた。

 しかし、私は先生のフルネームに"先生"ではなく"さん"を付けて提出した。

 もしかしたら他の人も先生の名前を書いてるかもしれない。ライバルとかライバルとかライバルとか。そう思ったから。

 そのとき、どこかで差をつけなければいけないと、焦りを感じていた。