11月12日

 私は体育の授業中、気を利かせて使い終わった三角コーンを片付けていた。


 ガターン。

 
 私はうっかりコーンを床に落としてしまい、恥ずかしかったので、急いで片付け、何事も無かったかのように振り返ると、先生が立ち止まって冷たい目で私を見ていた。先生お得意の意地悪な顔。

 「なにやってんだよ。」
 
 嘲笑って先生はそう言った。

 「手が滑りました。」

 そう言いながら先生の隣に行くと、先生がゆっくりと歩き始めた。なにこのカップルみたいなシチュエーション。

 先生と私の距離は今世紀最大に近かった。

 「もの大事にしないやつにもうバレー教えてやんない。」

 「え〜、いやです。」



 先生が私を見てくれてたことが嬉しすぎて、体育が終わってすぐ友達にこのことを報告した。すると友達は、

 「教える前提で話してんじゃん。」

 と言った。さすが我が友、ナイスな気づき。

 先生は相変わらず可愛かったのだと、友達の発言で思い知らされた。


 自惚れるなっていう方が無理、こんなの。

 しばらくの間、その出来事を思い出しては、にやけが止まらなかった。

 授業なんて、頭に入ったもんじゃない。

 まぁ、別にいいや。先生が笑ってくれたから。