車窓から見える風景が、山々ばかりになって、初

めて「もう少しだなぁ」と、ゆゆは思う。今まで

ずっと都会の生活をしてきて、農家の従姉でさえ

馴染めないのに、まさか、自分がこんな山奥で暮

らす事になるなんて、夢にも思わなかった。

「ねぇ、もう少し?」

ゆゆは父と母に問いかける。

「うん。もう見えるよ。」

助手席の敏江が、声高らかに言う。

「その家、大丈夫?もう長い間人が住んでないん

でしょ。悪霊とか住み着いてたら、、、」

敏江が、笑いながら「大丈夫大丈夫。ゆゆは怖が

りすぎなのよ。」と言う。運転中の和樹も、「大

家さんは何もないって言ってたよ。」と、二人と

も相手にはしてくれない。