「薬品に関しての知識量がものすごいですよね。私、先輩に追いつけるか・・・不安です。」
「先輩じゃなくて桐谷さんて呼べ。ここは学校じゃない。」
「はい」
先輩の『学校』という言葉にもしかしたら私を覚えているのかもしれないと思いもう一度先輩を見た。
「ちゃんと一年で育ってもらわないと俺は困る。」
「どうしてですか?」
「教育係として新人をちゃんと育てられないと俺の評価に関わるだろ。」
その言葉に遠い記憶がよみがえる。
俺の評価か・・・懐かしい。

「それと」
先輩が続ける言葉に私は聞き入った。
「俺は営業から早く出たいんだよ。」
「え?」
「研究チームに入りたいんだ。」
海外の有名大学の薬学部卒業の先輩がなぜ営業にいるのか少し疑問に思っていた。
「年に一度研究チームへの移動ができるチャンスがある。そこで認められれば研究チームに入れるんだ。本当は今年から俺は研究チームに入る予定だった。でも、石崎課長が営業から出してくれなかった。」