「昔から、お父さまは芭瑠さまに厳しいことを言われてきました。

そんな様子をずっと見てきたわたしからしてみれば、いつか芭瑠さまは逃げ出してしまうんじゃないかと思っておりました。

ですが、そんなことは一度もありませんでした」


「……」



「昔……芭瑠さまが8歳の頃。
その当時、芭瑠さまには想いを寄せている同い年の女の子がいまして。

その子のためなら、どんなことだって頑張れると……お父さまに約束をしたそうです」


8歳……それはちょうど10年前。
わたしの前から突然芭瑠くんがいなくなったとき。



「そして、お父さまは芭瑠さまに言いました。
大切な子のそばにいたいなら、その子を守れるくらいの、立派な人間に成長しなさいと」


なんだろう……っ、
泣いちゃいけないのに、瞳にジワリと涙がたまって、鼻がツンッと痛む。