「ちゃんと復習したんだ?」


私が問題を解いて先生に渡すと、それを見た先生がつぶやいた。


「一応……」

「えらい」



いつも通りはなまるをひとつ書いて私に返してくれた。

ふと、思う。

私なんでこんなに真面目にやっているんだろう、と。


「ここもできそう?」

「できます……」


すこしだけ私の口数が増えた。

前は頷いたり、首を振ったりするだけだったけれど、今は必要最低限は話すようになった。




「先生って」

「うん?」

「ここの高校に通ってたことあるんですか?」



今日女の子たちが話しているのを聞いた。

聞くつもりはなかったけれど、私の耳に入ってきた。

転校したのだということを聞いた。聞いてしまった。




私は、先生の動揺した顔を見逃さなかった。


「…………そうだな」


先生が悲しい顔をする。

気にしてないふりをしていてもわかってしまう。





だってその顔が私の顔と重なるんだから。







ねぇ先生。

私、先生といると自分が自分じゃないみたいなんだ。


私、話したくないのに自分から話してるんだ。



あの日から。先生が私を助けてくれた日から。


私ね、あの時すごくうれしかったんだよ。