「できない?」



問題を解いてるうちに自分の世界へと入ってしまっていた。

私はもう一度問題を見たけれど、解けるはずもなかったので、黙って首を縦に振った。


その時私と先生の距離が近づいた。

少しだけ私の心臓が跳ねる。



「ここはsin、cos、tanを使うところまではわかる?」

私が頷くと、また先生は説明を始めた。


「三平方の定理に………………」



最初は真面目にやるつもりなんてなかったのに、先生の真剣さが伝わってきて。

少しだけ理解しようとしている。



難しいことには変わりないけれど、先生が丁寧に教えてくれた。


解き終わったあとはノートを先生に見せた。



「あ、全部正解」


はなまるをつけて私に返してくれた。


「今日はやいけど全部できたから終わりにするか」



はやいと言いながら開始してから一時間は経っている。

思っていたよりも時間がはやく進んでいる。