「あ、そうだ、花園数学苦手?」

先生が思い出したように私に問いかけた。

私は疑問を抱きつつ、「苦手」と答えた。


「こないだの小テスト悪かった人は放課後俺と勉強会」


強い衝撃が私を襲う。

勉強会……?


驚きを隠せない私の脇で表情ひとつ変えずに先生は言う。



「嫌そうな顔してんなよ、ちなみに花園だけ」

「わ、たしだけ……?」

「あたりまえ、数理学科なんだから」

「…………」


化学の先生がなぜ数学を教えるのか不思議でたまらなかった。




放課後勉強会ってことは屋上にしばらくこられないということ。


さっきいつでもここにいるって言ったばかりなのに……。



「一時間だから、出来によっては変わるかもな」


勉強は嫌なのに先生となら、と思っている自分がいた。

一瞬だけでもそう思ってしまった。



今日はたまたま。

先生が優しかったから勢いに乗っていろいろ言ってしまっただけ。

私は笑っちゃだめなんだから。

私の傷はそのくらいで消えないんだから。



「明日からぜったいな」








先生との出会いがこんな私を変えていくーー。

180度変えていくんだ──────。