少し止まってしまったけどなんとか言えた。

頭を下げた。


人に頭を下げたのはいつぶりだろう……。



私が顔を上げようとした時。

私の頭にぽんと手が乗った。



頭上から聞こえてきた声。


「そんなこといいよ、元気になったならよかった」


私はブレザーのポケットに手を入れてあるものを探した。

クシャと音がするものを取り出して、先生に見せた。


「これも……ありがとうございました……」

「気づいたんだ」


そう言って先生はちょっとだけ笑った。





そして先生が欄干に手を添えて、景色を見ながら私に言った。



「花園」

「……?」

「つらい時は誰かに話せよ」



「え……」

先生の突拍子もない言葉に驚いた。



つらい時話した方がいいと言うのは私でも知っている。


けど、私はぼそっとつぶやいた。


「いないから……」

段々と語尾が小さくなっていった。