『もう大丈夫』

『こわ……か、た』


意識を手放す前、私は少しだけ落ち着きを取り戻した。

先生がやさしかったから。

先生があたたかかったから。



あの時先生がこなかったら私はどうなってたんだろう。





一日ぶりに階段を上がっている。

────ギィィ


少し寂れたドアノブに手をかけてドアを開ける。


さっきまで雨が降っていたからか、モヤっとした空気が私を包んだ。


湿気が混じっている気持ちの悪い風が吹いて、スカートをひらりと揺らしている。



そのまままっすぐに進んで、私は先生の背中を見つけた。



私の足音に気がついた先生が振り返る。

視線がぶつかる。


前もこんなことあったような……。


緊張して足が震える、いつもなら目を逸らしてた。



でも今日は…………。





「あ……の……っ」

「ん?」

「昨日は……ありがとうございました……それと、先生の評判悪くして本当に……ごめんなさい」