それがしあわせの始まりでもあり、罪悪感と戦う毎日の始まりでもあった。


後悔の中で生きてきた俺を救い出してくれたのはまちがいなくきみで。


笑ったのは何年ぶりだったのだろう……と思うほど笑えていなかった。




『先生が笑っていたら私もうれしい、もっと笑ってほしいと思う』


きみから飛び出す言葉の粒が凍りづいた心をやさしく溶かしていった。




好きだったーー。

俺を苦しめた恋だったのかもしれない、でもしあわせだった。


俺はお前に何かしてあげられてたか……?

お前がいなくなった日から頭から離れないんだ。

俺はお前にしあわせをもらっていた。それを返せてたか?





スーツのポケットから白い花柄の封筒を取り出す。



"先生へ"と書かれているところを親指で撫でる。

力が入らない手で書いてくれたんだろう。


いつもの字とは違うけれど、きみのやさしさが痛いほど伝わってくる。



手紙を持つ手が震えていて、心臓は高鳴りしている。はやく開けたいのに開けたくない。