誰なんだろうーー。


「無理して思い出さなくていいよ」





心の中でもこのひととは呼びたくないなぁ。

「な、ま、え、は、?」



声を出してるつもりなのに言葉がでない……。口パクになってしまって。



ちゃんと伝わってるかわからない……。




「ゆ、う、せ、い」


ゆうせいと吐息混じりにつぶやく。私がつぶやくと恥ずかしそうに目を伏せた。口元をゆるめて照れたように笑う。




「名前で呼ばれたのは初めてだな……」

「……?」

「気にしないで。いいよ、そのまま呼んで」



「うん」って言いたかったのに少し話しただけでつかれてしまった。力がスーッとぬけていく。




そして朝起きる度に身体に力が入らなくなり、動かなくなっていった。




看護師さんはいつも私の病室にきてファイルの中から何かを取り出して真剣な顔つきで何かを書いている。

熱を測ってもらっている間に盗み見た。