「先生と約束したもん……!なる!」

「その約束うそだったんじゃないの?」


『そんなのうそに決まってるじゃん』

先生がいたずらっ子のように笑う。その笑みはいじわるだ……いつもみたいなやさしい笑みとは全然違くて。


「なっ……だったら先生の前ではもう歌わないから……!」

「はは、うそだって、ごめん」



ほんとうに怒るわけないじゃん。だって先生が笑ってくれてうれしいもん。

そうやってずっと笑っていてほしい。悲しい顔なんて見たくない。

もっともっと笑顔を見せてほしい。

先生の笑顔は私の笑顔を作るんだから。


私は先生の前に小指を差し出す。

お祭りの時は先生から出してくれたから今日は私から。


「少しずつ前に進もうね」

「あと、今日みたいなことするな」

「先生はちゃんと美咲さんと話す」

「花園は俺に歌をきかせる」


「約束多すぎだよ」


小指同士が絡まる。

「「約束」」


先生の双眸と私の双眸がぶつかる。

ふたつの唇がゆるい弧を描いた。




誰かのために生きなきゃ価値がない。

誰かに必要とされなきゃ苦しい。

ずっとそう思っていた。

認められなくたって価値はある。生きてるだけで価値がある。


そのとなりに大切なひとがいたらそれは奇跡に近いのかもしれない。



"想い出"になって笑い合える日まで必死で生きよう。

「いのち」は有限だから。


そう強く思った。