私はずっと前のことを思い出す。

考えようとしなくたって簡単に思い出せる。

すぐに蘇ってくる。



『ママとパパはゆいちゃんの笑った顔がだいすきだからずっと笑っていてほしいな』

『ゆいちゃんの一番のファンだからね』

『宝物だよ』

あの日だって。

『頑張ってね、行ってらっしゃい』




違った……私のお父さんとお母さんはいつも私に笑っていてと言ってた。

ふたりが笑っていたら私もうれしかった。





私はひたすら首を振った。認めたくなかったはずなのに────。


「うぅ……っ……わからない……………っ」

「もう楽になれよ」





初めてだったんだ……お前のせいなんて思ってないって言われたのは。

視界がぼやける。景色が全部歪んでいく。

目元が熱くなって、目尻に水が溜まっていく。

私は顔を上げてぼやけた先生を捉えた。

その顔に怒りとか恨みなんてなかった。

やさしい顔だったんだ。


「……っ」

「泣きたいなら泣けばいいんだよ」

「泣いちゃだめなんてあるわけないだろ」


あたたかい何かが私の頬を伝っていた。


次々に流れ出す。堰を切ったように溢れてくる。


堪えきれず、嗚咽が漏れる。