そこに広がっていたのは、ぐしゃぐしゃになったバスだった。

送迎バスが事故にあったんだと幼いながらに理解した。

救急車に乗せられていくひとたち。

私は震える身体で近づいて両親を探した。

やっとの思いで見つけたのはたくさんの血を流しているふたりで。

違う、違う、と思いたくても紛れもなく両親で。



『お母さん……お父さんわたしだよ……?』

いくら揺さぶっても動くことはない。

『おかぁさん……おとぅさん……っ』

いつもみたいな笑顔を見せてくれることはない。


私はこの時初めてまわりを見た。


その時"事故"があったんだとようやく理解した。


救急車のサイレン、警察、血塗れの身体、泣き崩れるひとたち、野次馬…………

「痛い」「大丈夫?」そんな言葉たちが飛び交っていて。


私はしゃがんで目をつむって、耳を塞いで、現実から目を背けた。

あの光景、声、全てが忘れられない。



私はめまいに襲われて、気がついたら意識を失っていた。