「まずこの時代の美人は、高い鼻と大きな目が魅力的とされる現代とは真逆で、低い鼻と小さな目が魅力とされたんだ。そして江戸メイクの基本は赤と白と黒。江戸時代の女性も肌の白さにこだわりがあったんだよ」

「でも、現代とは全く違うんだね〜」

あたしは驚きが隠せない。先生は笑いながら言った。

「美人になる基準は、きっと時代によって違うんだよ。三代美女と呼ばれたクレオパトラや小野小町だって、現代人から見れば美人には見えないかもしれないし……」

女性はおしろいを塗り終え、着物をきちんと着直し、次のメイク道具を手に取っている。先生も前を向いた。

「実は、あのおしろいが危険だったんだ」

「えっ……」

女性はたっぷりおしろいを塗っていた。あれが危険!?現代人なんて何も考えずに美白を目指してるのに。

「当時のおしろいには、鉛が使われていたんだ」

「えっ!?鉛ってあの……」

鉛のおしろいは大量生産でき、ノビがいいということで人気だったみたい。先生が丁寧に解説してくれた。