「こっちだよ、おいで」

先生に連れて行かれたのは、美容院やエステをしてもらえる場所じゃない。一般庶民の家。

「お邪魔しま〜す」

先生と同時に言い、家の中に入る。過去の人たちにはあたしたちの姿は見えないし、声も聞こえない。でもこう言ってお邪魔するのが礼儀だよね?

「ほら、あの人が今からメイクをするからよく見てご覧」

「うん」

鏡台の前に美しい着物を着た女性が歩いてくる。そして、鏡台の前に座ったかと思うと突然着物を脱ぎ始めた。先生は背中を向けている。

「えっ!?何で脱いじゃうの?」

「昔、肌を白くするおしろいは顔だけじゃなくて顎下や首すじ、襟に胸のあたりにも塗っていたんだよ」

「そ、そうなんだ……」

同性とはいえ、ばっちり胸が見えている。あたしも目をそらしたい……。

「同時、美容のための本が出版されていたんだけど、美のノウハウがぎっしりだよ。でも現代とは全く違うんだけどね」

「どんな内容なの?」