「じゃあ、行こうか?」

先生は、黒いフロックコートを羽織る。旅の出発だ!!

先生は、実は魔法使いだ。魔法を使って過去に行くことができる。あたしはたまたま先生が魔法を使っているところを目撃し、付き合うことになったんだ。

先生は魔法を使う時、フロックコートを着る。何度か過去に行ったことがあるけど、先生のその姿を見るといつも以上にかっこよく見えるんだよね……。

先生が片手に本を持ち、もう片方の腕をあたしの腰に回す。ドキドキしちゃう……。

「我らを過去に意識を移したまえ」

先生がそう言うと、なんの変哲もなかった本がパアッと白く輝きだす。あたしはゆっくりと目を閉じた。



人のざわめきと外の匂いで目を開ける。目の前に広がっているのは、学校ではなく見たことのない街の風景。人々の格好からして昔の日本だ。

「すごい!時代劇の中にいるみたい!」

あたしがはしゃぐと、先生が「ここは江戸時代の江戸ーーー今の東京だよ」と微笑む。そして、あたしの手をギュッとつなぐ。普通のつなぎ方じゃなくて、指を絡めて……。