「……ええと、冗談、だよね。
いくらなんでもそれはさすがに騙さ……」
ぱっと手が伸びてきた。
最後まで言うことが出来なかった。
言い終わらないうちに、口を塞がれたから。
ものすごい至近距離に、わたしじゃない顔。
……何が、起きているの。
不自由なのは、手で塞がれた口だけなのに、なぜか解かれた右手さえ動かせなかった。
ただ今起きていることを理解するしか出来ない。
端正な顔立ちを直視するにはあまりに近過ぎた。
綺麗で、何も考えられない。
「……嘘じゃないよ、本当だよ。ちゃんと宣言したから。
俺は、斎藤さんが好き。
真っ直ぐで、格好良くて、本当は優しいところが、好き。
……斎藤さんは俺のこと、どう思ってる?」
やっぱり、そうだ。
彼がわたしの近くにいてくれるだけで、世界が鮮やかになるんだ。
灰色と白と緑色だけの世界が、無限の色に染まっていくんだ。
彼の一挙一動は、特別なんだ。
喩えるなら、神様のギフトみたいに。