口を固く結んで答えないでいると、目を合わせようとしてきた。
「……なんで見るの」
「目を見れば分かるから」
「やめて」
避けても避けてもついてくるなんてしつこい。
しつこい人は、関わりたくない。
「それ、本心じゃないよね。
本当は……」
「え?」
「何でもない。斎藤さんは、俺を守ってくれているんじゃないの?」
「……何言ってんの」
「ちゃんとこっち見て」
「……そんなかっこいい理由じゃないよ」
あまりに本当のわたしとかけ離れすぎていて、笑いそうになってしまう。
「嘘つかないで」
「本当だから」
「嘘だ」
「本当」
「じゃあよく聞いて。今から言うのは本当の事だから。
俺は斎藤さんのことが好き。
だから、斎藤さんも本当のことを言って」
驚きで、思わず伏せていた顔を上げると、耳と頬がほんのり赤く染まっていた。
……冗談にしては出来すぎている。
リサが吹き込んだにしては、やりすぎなんじゃないか。
それとも、夢?