「それはこっちのせりふだよ。
なんで逃げ回ってるの」
屋上へ続く階段を登ってくる。
それだけのことなのに、安心なんてもう既に引っ込んで、来て欲しくないという気持ちしかない。
ここにいるべき人じゃないし、何よりわたしの嫌な部分を見せられる気がしてならない。
「……来ないで」
「どうして?」
「……だから、来ないで!来るな!」
急いで立ち上がり、階段に足を掛けたのに、簡単に手を捕まえられてしまった。
手加減してくれていただけだった。
「離してよ!」
「じゃあどうして俺から逃げ回ってばかりなの」
「関係ないよ!」
押しても引いてもびくともしなくて逃げ道がない。
空いている方の右手で手を引き剥がそうとしても逆に手を捕えられてしまった。
それから手首を掴まれ、壁と目の前の彼に挟まれた。
前が白一色で心臓が暴れ回る。
「ちゃんと答えて、どうして逃げているのか」
「……」
言える訳がない。