昼休みになったら荷物を持って教室を出た。
休み時間の度に話しかけられないように校内を逃げ回っていたから、もう追いかけて来ないと思う。
屋上に出てみたものの、寒さに耐えられなくて踊り場で弁当を広げた。
今日はリサがあいつにくっついていたから私物をほとんど荒らされないで済んだ。
毎日こうなればいいのにと思う反面、どこか満ち足りていない気がする。
心が満たされない。
綺麗なお弁当を見て安心するのに、心は空っぽ。
どうしてだろう。
わたしは何を求めているんだろう。
この状態の何が不満なんだろう。
「……来るわけ、ない」
情けないくらいに掠れた声だけしか響かない。
他には遠くで足音がするだけ。
食欲なんて湧かない。
「斎藤さん」
「……なんで」
声を聞いただけで、どうしようもなく心が落ち着いて、凪いでいく。
満たされていく。