教室の前に来ると、いつもと空気が違う気がした。
気のせいだと言い聞かせてドアを開けると、マナとカノンが立ち塞がっていた。
「おっはー、斎藤さん」
「ここから先は入れませーん。
あんたが入ると教室の空気が澱んじゃってしょうがないの。
昨日はやけに空気が澄んでるなーって思ったら斎藤さんがいなかったから!
きゃははははは!」
「カノン笑いすぎー。
でもこれ本当だから、もう入らないで」
壁にもたれてヘラヘラ笑っているのも、もうそんなにむかつかない。
この人たちって誰かを貶めることが趣味なんだなあって思うとどうでも良くなった。
完璧なメイクをしていても、ヒートテックがブラウスの袖から出ていることがおかしくて笑いそうになった。
安い洋服屋に行く想像が簡単に出来てしまう。
教室に背を向けて歩き出すと、手首を掴まれた。
「おい無視すんなよ」
「斎藤さーん、リサが呼んでるよ?」
だからなんだろう。
リサの命令が絶対じゃないし、そもそもリサは何の権限があってクラスのリーダー的存在なのか。