久しぶりに屋上に行ってみたかった。
階段を上りながら少しわくわくしていた。
ドアを開けると朝の冷たい風が流れ込んできて、今が冬だということを実感した。
「さすがに寒いか……」
ここに来たら会えるんじゃないかとちょっと期待していたけれど、そんなに都合の良いことなんてあるわけがない。
マフラーを巻いていても寒い。
ポケットの中のカイロを触りながら空を見上げると、淡い青のベールがかかっているような、幻想的な風景だった。
スマホを取り出して、シャッターを切ると電子音が空気を切り裂いた。
スマホの中の空は、目で見るよりも作り物みたいで現実味があまりない。
分かってはいたけれど、やっぱり写真の現実味の薄さがあまり好きになれない。
「こんなの残したってなあ」
ごみ箱に捨てると胸がすくような感じがした。
退屈だ。
教室にさっさと向かえばいいのに、ここにもう少しいたい。
予鈴が鳴ってようやく重い腰を上げ、教室に戻る気になった。