「寝てなよ」
「……朝寝たからそんなに」
こんなに優しくする必要なんてないのに。
ほっといて薬でも飲んでいれば明日の朝には治るんだから。
それでまたあの教室に戻って、わたしたちもまた昨日までと同じようになるだけだ。
「じゃあなんか眠れそうな歌を歌ってあげる」
「……なんでそんなに、嬉しそうなの……」
「これなんか眠れると思う」
お世辞にも上手とは言えないけれど、不思議と安心する音だった。
ちょっとずつ夢見心地になってくる。
さっきまで眠くなかったのが嘘みたいなくらいに瞼が重たい。
普段なら絶対にありえないことだけど、こんな時だから誰かがいてくれると、安心するのかもしれない。
「おやすみ、斎藤さん」
それが最後に聞いた声だった。