湿布を貼ったことで精神的に安定したせいか、さっきよりもかなり楽に立つことが出来た。
今度はよろけずに歩くことも出来る。
下駄箱には予想に反して誰もいなかった。
待つとか言っていたあいつも。
昇降口を出ようとしたその時、横から何かが飛び出してきた。
「えっ」
「反応薄いよ、斉藤さん。
もっと驚くところだよ」
結局いるのか。
「……」
「あんまりどっきりに反応しないんだ」
「驚きが出にくいだけ」
「斉藤さんは笑うよね、本当は」
「……どういうこと?」
「教室でみんなが笑っている時も、これは絶対誰でも笑うって時も、笑わない。
むしろつまらなさそうな顔になっていってる。
1回でいいから見たいなあ、斉藤さんの笑ったところ。
でも自分の気持ちに正直ってことだろ。
すっげえいいことだよ、それ」
「あんたがいいと思うならいいんじゃない」
「じゃあまた明日」
「……また、明日」
「よく出来ました」
相変わらず、よく分からない。