コンコン、とノックの音がした。
「……」
「斉藤さん、起きてる?」
「うん」
「買ってきたから貼りなよ」
「……ありがと」
袋の中には湿布以外にも栄養食品が入っていた。
「食べ物は……」
「斉藤さん、食べてないと思って。
昼休みに三村に連れていかれただろ?
ほとんど弁当にも手をつけていなかったし」
見られていないと思っていたのに。
弁当を食べたか食べていないかなんて、普通は気にする人はほとんどいない。
見ていないようで、こいつはしっかり見ている。
「……湿布貼るから出て行って」
「じゃあ下駄箱で待ってる」
「1人で帰れるからいい」
「俺は斉藤さんと帰りたいから待ってる」
「……勝手にすれば」
一瞬でもいいやつだと思ったのが間違いだった。
こいつのチャラチャラしたような、飄々としたようなよく分からないところが見るだけでイライラする。