「それがどうしたの?」



「いや、別に。

そういうのも正しさだなーって」



「……正しいとか、間違いとか、どうでもいい。

わたしは面倒くさいからやり返さないだけ」



「俺はかっこいいと思う、そういうの」



「……」



「やり返さないって一番難しいことだと思うんだよ。

でも斉藤さんは何でもないことのようにやってのける。

ずっとすげーって思ってた」



ははっと笑うそいつが眩しかった。



太陽みたいだと直感的に思った。



「でもさ」



羽が生えているみたいに軽やかに階段を飛び降りた。



「どうして自分を壊すようにするの?」



「……は?」



「人に攻撃するはずなのに、斉藤さんはいつも自分のものを壊すようにしている」



「……なんでだろ」



「自分を守るため?」



「さあ」



「傷ついても、痛みを感じないようにするため?」



「……」



「答えて」



「うるさい!

わたし、人の心にずかずか入ってくる人が大っ嫌いなの!

ここから今すぐ消えろ!」