ベチャッと間抜けな音が響いた。
同時にわたしの顔に何かが直撃した。
それに臭う。
少し遅れて全身に水を被った。
顔に張り付いているものは雑巾だった。
ああ、前にもこんな事があったっけ、と思い出せるほどにわたしは呆然としていた。
顔の水を拭うけれど、拭う度にぬめりが増している気がする。
「きゃはははは、ばっかじゃないの!
それ、石鹸水なんだけど!」
「何それ、ビンボーな斉藤さんは洗顔しているの?」
「初めて洗顔したのかー、そっかそっか」
何が楽しいんだ。
こんなことで満たされるのか。
こんなつまらないことに笑えるのか。
こんなことに。
雑巾を誰かの机に向かって思いっきり投げつける。
誰でもいい。
傍観者は、一番最低だ。
立ち上がってトイレに入ると頭ごと流しに突っ込んだ。
前にも同じことをしたからやり方は分かっている。
ぬめりを落としてから髪の毛の水気を取り、持っていたゴムで簡単に縛り、教室に戻った。