「斉藤さん、最初に聞いとくけど、リサのお金盗んだよね?」
は?
なんの根拠があって言っているんだろう。
財布を家に忘れただけじゃないの?
「盗んだんだよね?」
何を言ってもこの熱された空気にわたしの言葉は届かない。
聞く耳を持たない。
とにかくわたしが悪いことにされる。
そんなことが簡単に想像出来てしまう。
「はい!盗んだそうです!」
驚きつつも嬉しそうに、特に男子が大騒ぎしている。
「証拠があるはずだから探そうぜ」
「あいつのことだから鞄に入れてんじゃねえの?」
「それな!いつも鞄抱えて移動してるし」
こいつら本当に馬鹿だ。
鞄の中は今朝見た時には自分のもの以外、何も入っていなかった。
ぐっと手を引いてみるけれど、力では男子に敵わない。
すぐに抑え込まれてしまう。
「ちぇっ、何もない。
次はどこ……」
「……ひどいっ!
こんな所にあたしの財布……」
見つかったのはわたしの机の中。