颯爽と立ち去ってしまったそいつにみんなが気を取られている隙に、わたしは購買に行って人気のないパンをいくつか買ってリサに渡した。
先生はもうわたしを少しも信用していない。
毒を盛ったとでも思っているのだろうか。
「……え。……ありがとう、斉藤さん!
嬉しい!」
その一言で空気が軽くなり、日常に戻った。
よく見ると、リサの目には余裕と怒りがあった。
「斉藤さん、あとで話があります。
放課後、職員室に来てください」
先生が立ち去ったのを確認したリサがぼそっと呟いて通り過ぎた。
「余計なことするなよ、ブス。
あと人気のないパンを買うなんてふざけた真似すんな、死ね」
「存在が邪魔だから」
「いるだけで空気が悪い」
今の言葉がそっくりそのままリサ達に返ることだけをわたしは望んでいた。