わたしが動かずにいると、ため息をつかれた。



「斉藤さん。あなたにも原因があると思うのよ。

喋らないで黙っていれば、誰かが自分の気持ちを代弁してくれると思っているんですか?

社会は甘く……あっ!」



説教されるためにわたしは黙っているんじゃない。



こんなふうにうるさく言われるくらいなら、こちらから願い下げだ。



階段に足をかけた時、上から声が降ってきた。



「センセー、それは酷くないですか?

斉藤さん、何かしてましたか?」



え、と固まる空気。



こいつ、見ていたんだ。



たぶんわたしがパンを投げたところとか、全部。



その中でもリサは余裕の表情だった。



どんな状況でも自分を有利に見せるのが上手だから。



「そ、そういう青木くんは、見ていたんですか?」



「あー俺はよく分かんないですけど、途中から見てました。

面白そうだなーって思って。

いい暇つぶしにはなりました、ごちそうさまです」