「美味かったな」
「うん、美味しかった」
学校がない日にまた来たい。
嘘じゃなくて本当に美味しかった。
誰かの作る料理は、自分で作るものよりもコンビニのものよりもずっと美味しい。
「斉藤さんと行けて良かったよ、俺。
これ、デートか」
「ただ一緒にごはん食べただけじゃないの?」
デートなんてことは絶対にない。
「ねえ、口に赤いの付いてる」
さっきから気になっていたけれど本人が気付くのを待っていた。
なのに一向に気付く様子もなく、このままだと間抜けな顔を晒しながら帰ることになるのがオチだから言った。
「え、どこ?」
「右側のこの辺」
自分の顔の上で再現して教えてあげる。
「ここ?」
「反対側、そう、そこ」
「うわっ、危ねー、このまま帰るとこだったわ」
「そのまま帰しても良かったけど」
「この優しさはありがたく頂くから」
会計を済ませてもらってから、わたしはお金を返そうとしたけれど頑なに拒まれた。
あまりに断るから今度昼ごはんを奢るということでとりあえず落ち着いた。