「えっ、おい、斉藤さん!逃げるな!」
別に同じクラスの人に見られなければいい。
ここから少しでも人目につかない所に行ければ。
路地の角を1つ曲がったところで手を掴まれた。
「捕まえた」
「……あの、さあ。……話す場所、ちょっと、考えてよ。
いちおう喋らない人で、通ってんだから」
久しぶりに走ったせいで息が上がってなかなか言いたいことが言えない。
「あと、捕まえたって、わたしは動物?」
「や、人間。
ほんと面白いよね、斉藤さん。
で、すごい偶然なんだけどこの近くにレストランがあるんだよ。
もう行くしかないでしょ」
確かにいい匂いがする。
イタリアンだろうか。
トマトソースやオリーブだったりレモンなどの柑橘系の匂いもする。
何だかお腹が空いてきた。
疲れてもう言葉を返す気力もなく、後ろをついて行った。