「……で、ここが……」
おかしい。
さっきから全然違う方向に進んでいる。
あんなに時間をかけたのに。
わたし、本当は分かっていなかったのかもしれない。
あの場限りで理解した気になっていただけ?
こいつに分からないなんて思われたら何を言われることか。
「……それで、ええと……」
じわりと冷や汗が出てくる。
もう軌道修正するには遅すぎる。
でもどこが違うのか全然分からない。
「……ここだろ?」
「え?」
「この数字から片付けていかないと」
「……」
「斉藤さん、計算した後から間違えてる」
「……それでか」
「納得?」
「うん」
「これだけは授業でやった問題だから分かると思ったんだけど」
こいつ、どこまで人の揚げ足を取るつもりなんだろう。
「でも、斉藤さんはたぶんあの時問題集を三村に取られていた。
違う?」